無声映画”Kean”について

2019年11月28日フランス文学, 映画

Alexandre Dumas の原作によるKeanの翻訳の過程で、ロシア革命期に亡命したロシアの俳優や映画人たちがパリで制作した無声映画のなかに『キーン』があることがわかった。発売元はFlicker Alleyというロサンゼルスにある映像販売会社。

DVDはFrench Masterworks: Russian Emigres in Paris 1923-1928 – 5 Iconic Films Albatros Productionsである。Keanはこのコレクションの中に収められている。

12月27日に会員登録してオンラインで購入、1月10日には到着した。

 

 

 

 

 

 

 

Keanの内容についてはカリフォルニア在住のFRITZI KRAMERによる詳細な解説に任せるとして、私としてはざっとした印象を書いておきたい。

役のキーンは亡命ロシア人俳優のイワン・モジューヒンが演じている。本編の字幕はフランス語が入っていて、主としてデュマの原作から抜粋している。英語の字幕もリメイク版として付けられている。内容はデュマの『キーン』にプロットは借りているものの、エンディングは喜劇として書かれた原作とは全く異なって、キーンは女優志望の若いアンナとニューヨークに旅立つという幕切れではなく、キーンが恋したデンマーク大使夫人のエレナに看取られながら死の床で事切れるという悲劇的な最後で終わる。

無声映画の完成は1923年で、デュマの死亡年は1870年というから、著作権の消滅を待って公開したものかもしれない。

なお、FRITZI KRAMERの解説中にデュマ原作の英語翻訳の情報があってありがたい。