Chapitre IV トレド
『コリコーロ』翻訳マラソン その3 ドミニコ・バルバイアの肖像
(説明)ドミニコ・バルバイア1は劇場支配人というイタリア独特の地位にいて絶対権力者のように振る舞った。この記事中にはイタリア・オペラ界の影の帝王の話が満載である。胸声による3点ドとか、我々門外漢には分からない興味をそそる話がこれでもかと見られておもしろい。
(引用)
バルバイアは劇団を訓練するために誰も信用しなかった。彼の原則は、知名度の高いアーティストとの関わりをできるだけ少なくすることだった。評判というものは頂点に達したあとは下がるだけであり、有名な才能は得るより失うことの方が多かったからだ。彼は自分で育て上げることを好み、通常はこわごわ in anima vili 訓練を開始した。
以下が彼のやり方である。
彼は五月か九月の晴れた朝、御者に命じてナポリの郊外に連れて行かせた。田舎に到着すると、彼は馬車から降りて、供のものを返し、一人で歩いて胸声による3点ドの持ち主を探した。テナー歌手を作るのにそこそこ顔立ちも格好も良く、しかも怠け者の農民に出会うと、彼は親しげに彼に近づき、肩に手を置いて、おおよそ次のような会話を始めた。
「ところで!きみ、仕事は疲れるよね?鋤を持ち上げる力もないしね?」
「休んでいましたんで、猊下」
「分かってる!分かってる!ナポリの農民はいつも休んでいるからな」
「蒸し暑いからですよ。それに、土がとても硬いんで!」
「きみは美しい声を持っているに違いない。ちょっとした音楽ほど心を軽くして力を与えてくれるものはないからね。何か歌ってくれないか?」
「私がですか!生まれてこの方歌なんか歌ったことはありません」
「もう一つの理由が見つかった。きみは人より新鮮な声を持っているはずだ」
「冗談をおっしゃって!」
「いや、きみの声が聞きたい」
「で、あなたに声をきかせて何かいいことがありますか?」
「そう、もしきみの声が気に入ったら、きみはもう働かなくていい、私が連れて行くから」
「召使いですか?」
「それより良い」
「料理人ですか?」
「もっと良いと言ってるだろう」
「どうしてまた?」不信感を持って農民は尋ねた。
「何を気にしているのだ?歌ってみてくれ」
「大声で?」
「肺から空気を全部出して、特に口を大きく開けて」
その不幸な男がバリトンまたはバス・タイユの声しか持っていなかった場合、支配人は彼に仕事への愛情と田舎暮らしの幸福について非常に慰めになる格言を残してすぐに踵を返した。しかし、もし支配人がその日幸運にも一人のテナーを見つけられたら、彼を連れて馬車の・・・後部に乗せた。
- Domenico Barbaja (ou Barbaia ; Milan, 10 août 1777 – Pausilippe, 19 octobre 1841) est un impresario d’opéra italien.
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