Dossier VI TEXT : Sensation

アルチュール・ランボー

TEXTE

アルチュール・ランボー Arthur Rimbaud (1854 シャルルヴィル生-1891 マルセイユ没)

詩人、彼は秀才であったが、圧制的な母親から逃れるために家出を繰り返し、パリ・コミューヌ のさなかにパリに出る。詩を送って招かれたヴェルレーヌ Verlaine (Paul) の新婚家庭を破壊し、イギリス、ベルギーを旅し、いさかいからヴェルレーヌに発砲されてこの関係は終わる。自分で出版したのは『地獄の季節』Une saison en enfer (73) だけで, 19あるいは20歳で筆を折り、その後は貿易などに従事して、最後はマルセイユで短い生涯を閉じた。早熟な天才として現在も多くの心酔者を生み続けている。この詩は『詩集』Poésies(死後出版)から、その他に『飾画』 les Illuminations (74執筆?) がある。

Sensation

Par les soirs bleus d’été, j’irai 1 dans les sentiers,

Picoté 2 par les blés, fouler l’herbe menue 3:

Rêveur 4, j’en5 sentirai6 la fraîcheur à mes pieds.

Je laisserai 7 le vent baigner ma tête nue.

 

Je ne parlerai pas 8 , je ne penserai  9 rien:

Mais l’amour infini me montera 10 dans l’âme,

Et j’irai loin, bien loin, comme un bohémien,

Par la Nature 11,-heureux comme avec une femme.

発音についてはこのサイトからmp3の音声がダウンロードできます。

また、podcastで録音されたサイトもあります。

ランボーと言えば『酔いどれ船』(Le bateau ivre )です。朗読はあのジェラール・フィリップ (Gérard Philipe)です。(YouTubeでご覧ください。場合によって再生できない場合もあるかもしれません)

 


定型詩の音節形成についてのスケッチ

フランス語の定型詩の音節の数えかたは簡単です。とにかく母音一つで1音節と考えればいいのです。ランボー の詩の第1詩行(vers)を音節に句切ってみましょう。

Par les soirs bleus d’été, j’irai dans les sentiers

par/ le/ sɯa:r /blø/ de/ te /ʒi /re /dɑ᷉/ le /sɑ᷉/ tje

1      2        3        4       5     6    7    8     9   10   11   12

以上のように12音節あることがわかります。[sɯa:r] のような長母音も1音節であることに変わりはありません。 ただし、sentier の [tje] のような半子音(半母音)は詩人の好み, あるいは必要上2音節に数える場合があります。そ の場合は、他の詩行で確かめればいいのです。問題は脱落性のe (e caduc)または無音のe (e muet) でしょう。

第2詩節(couplet) の第1詩行は Je ne parlerai pas, je ne penserai rien ですから、話し言葉では [ʒənparlərepa ʒənpɑ᷉sərerjɛ᷉ ]となり、母音の数はたった9です。定型詩では [ʒə nə par lə re pa ʒə nə pɑ᷉ se re rjɛ᷉] とな り,やはり12音節になるのです。つまり、次に子音が来れば e caduc は1音節と数えるのです。反対に, 次に母 音が来る場合は数に入れません。最後の詩行を調べてみましょう。

Par la Nature, -heureux comme avec une femme.

par/ la /na /ty:r /œ: /rø /kɔ /ma /ve /ky /nə/ fa /mə

1       2      3    4       5      6    7     8      9     10   11    12    13

comme の e はゼロ, une の e は1と勘定することが分かるでしょう。ところで、この詩行は13音節あります。この点はどうでしょうか。それを理解するには脚韻(rime あるいは pied) の概念を知らなくてはなりません。

この詩の各詩行の最後を見ると,それぞれ sentiers, menue, pieds, nue また, rien, l’âme, bohémien, femme となっていて, 1行おきに同一の音の繰り返しになっていることに気が付くでしょう、これが脚韻です。脚韻は e[ə]で終わ るものを女性韻、それ以外の音で終わるものを男性韻と呼びます。また、女性韻で終わる脚韻は1音節と勘定しな い約束になっています。ですから、この詩の偶数行はすべて13音節あっても12音節と考えるのです。さて, l’âme[ɑ:mə]と femme[famə] は同じ音ではありません。17世紀の厳密な詩法論者なら認めないところでしょうが、その時代 から殆どの詩人がこういう脚韻を用いています。つまり、許容の範囲内だと言えるでしょう。また,どれだけ脚韻を踏むかによって豊かな(abondantes または riches)・十分な(suffisantes)・貧しい(pauvres)脚韻といった表現をする こともあります。

ところで、この詩のように男性・女性・男性・女性(逆も可), つまり abab のように交互に脚韻を踏むものは交錯韻(rimes croisées)、aabb のように続いているものは平韻(rimes plates)、abba のようなものは抱擁韻(rimes embrassées)と呼びます。

最後に、定型詩は時代によって好まれる形式が変わります。

たとえばソネ sonnet (4詩節で詩行の数が4+4+ 3+3)のように不滅の人気を誇っているものから一時的な流行にすぎないものまでその数は極めて多いため、ここ では説明しません.また, 音節の数も2音節の詩から13, 14音節の詩まで様々な試みがなされてきましたが、この 詩のように12音節(『アレクサンドル大王物語』で用いられたところから、特にアレクサンドラン alexandrin という呼び名が付いている)を最大とするのが普通です。そして, ランボーのこの詩はアレクサンドランで書かれ、交錯韻の2詩節でできた詩だと言うことができます。

フランス詩の構造分析には鈴木信太郎『フランス詩法』上下が参考になると思います。『フランス詩法』は絶版で新装復刊が出たようですが、現在は不明です。


ヴィクトル・ユーゴーは天才詩人でしたが、彼の詩のDjins[ʒin]は、2音節で始まり次第に音節を増やし10音節に至り、また音節を減らして最後は2音節で終わるという極めて前衛的な実験詩として有名です。

HugoのDjinnsの朗読は以下の動画でお楽しみ下さい。(YouTubeでご覧ください。場合によって再生できない場合もあるかもしれません)



V Questions sur le texte

1) Pourquoi les soirs sont bleus?

2) Qui est picoté par les blés?

3) Pourquoi l’auteur ne veut pas parler et ne veut pas penser?

4) Pourquoi l’auteur écrit-il Nature avec “N”majuscule?

5) Relevez le vocabulaire de la nature.

6) Quels sentiments vous laisse ce poème?


 

  1. jirai<aller の単純未来
  2. picoté par les blés は je を修飾する
  3. fouler l’herbe menue は aller が不定法を取ることができるため
  4. reveur は je と同格「reveur である私は」の意味
  5. en = (des blés et) de Therbe menue, つまり la fraicheur (des bles et de l’herbe menue. des bles を受けるかどうかは解釈が分かれる。
  6. j’en sentirai<sentir の単純未来
  7.  je laisserai<laisser の単純未来, laisser は使役動詞 faire と同様に不定詞(この場合 baigner) を取り,その動作主を laisser と不定詞の間に置くか、または前置詞 par の後ろに置く、意味は「le vent が ma tete nue を baigner するに任せる」
  8. je parlerai<parler の単純未来
  9. je penserai<penser の単純未来
  10. montera<monter の単純未来, me montera dans l’âme について, フランス語では、身体的な表現はまず全体を述べて から後で部分を特定するのが習慣です。英語の, climb to my heart のように, montera dans mon âme という内容が me montera dans l’âme と表現されるのです。用例については Dossier IVの文法 VI 代名動詞の3を見なさい。
  11. Nature が大文字になっていることに注意しなさい。

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